技術について 技術紹介

OBN

Ocean Bottom Nodes(OBN)は、海底で振動を記録するための海洋地震探査装置で、従来のケーブルとは異なり、海底に自由に配置できます(図1参照)。
OBNは、数十メートルから数千メートルの水深で使用することができ、OBNを利用した地震探査には以下の利点があります:

  1. 海上でのストリーマ探査方法に比べて、広い方位角や長いオッフセト距離の地震データを取得できるため、より高解像度の地下イメージを提供できます。
  2. 波浪や船の交通等の、海面ノイズの影響を受けにくいです。
  3. 圧力データだけでなく、3成分の振動データも取得し、より多くの地質情報が得られます。
  4. 従来のケーブルによる探査方法が実用的でない地域(石油プラットフォームの周辺や複雑な海底地形等)で使用出来ます。

「たんさ」は、通常、安全性の理由から水深50m以上の海域で調査・運航しております。しかし、近年のCCSや再生可能エネルギー開発の増加に伴い、水深50m未満の浅海での地震探査に対する需要は高まっています。OGFでは、「たんさ」のアクセスが難しい浅海域でも、最新のOBN技術を使用して地震探査の範囲を拡大することを目指し、経験豊富なOBN調査会社との技術的ネットワークの強化を通じて、先進的でコスト効果の高い3次元OBN探査を実現しようとしています。

図1:OBN地震探査コンセプト
図1:OBN地震探査コンセプト。テザー管理システム(TMS)は、ROV(遠隔操作無人探査機)を船の揺れやアンビリカルケーブルの重さから解放し、ROVの自由な動きを可能にし、OBNの設置を容易にします。

4Dモニタリング

一定の時間間隔で3次元地震探査を繰り返す手法を4D(4次元:3次元空間軸+時間軸)地震探査と呼んでいます。本手法は、地下貯留層・地層内で生じる、流体の置換や圧力変動等の、物理的特性変化の検出に、非常に効果的です。地震波は、物理的特性変化の影響を受け、最終的な3次元地震探査のイメージに、違いをもたらします。本特徴はモニタリングプロジェクトで広く利用されています。
尚、事前の適用可能性調査段階において、下記点を確認する必要があります:

  1. 地震探査の再現性
  2. 物理パラメータ変化に対する地震波応答の大小
  3. 3次元地震探査の最適設計
  4. 3次元地震探査を行うタイミングの計画

4次元地震探査は高コストのため、光ファイバを使った音響センシング(DAS)による地震探査等の、よりターゲットを絞った安価なモニタリング手法も代替として提案されていますが、当該手法では、事前に想定できない現象が発生する可能性も指摘されています。4次元地震探査は、より完全なモニタリングを可能にするため、想定外の現象を見逃すリスクを低減できると期待されています。 OGFは、4次元地震探査をより身近なものにできるよう、最適な調査設計と運用効率の向上を通じて調査コストの削減に努めていきます。

多重反射を利用したイメージング

海上地震探査において多重反射波はノイズであり、下記3つの方針でその除去方法が研究開発されています:

  1. 一次反射波と多重反射波の特性の違いを利用する方法。
  2. 多重反射波モデリングを実施する方法。
  3. 記録から直接多重反射波を予測する方法。

一般的に使用されているSRME法は3.に属し、海面に起因した多重反射波のみをモデル化、差し引き除去を行います。
一方、モデル化した多重反射波を利用したイメージングも試みられており、海面多重反射波は、海面反射を区切りに2つ以上の一次反射波から構成されると考えられ、その全ての過程が記録に含まれています。(図 2(A)参照)。 SRMEでモデル化された海面多重反射波を用いて、海面での上方・下方進行波が得られれば、それらの逆方向・順方向伝播とイメージング原理の適用で、多重反射波イメージを得ることができます。

実際に多重反射波のイメージングは、分離された上方・下方進行波を、受振・発振波動場として使用することで達成できます。この方法は、Separated Wavefield Imaging(SWIM)と呼ばれています。SWIMは、反射点での照射が増えるため、高解像度のイメージングが可能です。(図 2(B)参照)

OGFが「たんさ」によって取得するジオストリーマデータは、上方・下方進行波の分離を容易にする利点があり、また、SWIMはOGFが日常的に使用するTGS社の SPArKデータ処理ソフトウェアにおいて適用可能です。

図2
図2:(A) プライマリ反射(実線)と多重反射(破線)のイメージングのための概略図。多重反射からの照射(破線の円)は、プライマリ反射からの照射(実線の円)よりも広い地下範囲をカバーします。(B) 単一の地下反射面のイメージ(実線の円)に注目したとき、考えている発振点ー受振点に関係したプライマリ反射の寄与は反射角は1つですが、多重反射では複数の反射角の寄与から生成されることが分かります(破線)。